特許庁の全出願データから、企業がどこに発明を寄せてきたかを読む

特許の読み方

J-PlatPatで「会社が何に力を入れているか」を調べる手順

特許は出願から原則1年6か月で全件公開され、誰でも無料で検索できる。J-PlatPatで「ある会社が何に力を入れているか」を自分で調べる手順を、社名の表記ゆれという最大の落とし穴を中心に、画面の操作に沿って書いた。

会社が中で何を研究しているかは、求人票にも会社案内にも書いてありません。特許には書いてあります。出願は原則として1年6か月後に全部公開され、無料で検索できます。

その検索の入り口が、特許庁の関連機関INPIT(工業所有権情報・研修館)が運営する「J-PlatPat(特許情報プラットフォーム)」です。登録もログインも要りません。この記事では、J-PlatPatで「ある会社が何に力を入れているか」を調べるときの画面の操作だけを扱います。出てきた件数や分類をどう読むかという理屈の側は、企業研究のための特許の読み方に分けました。

画面名とボタン名は2026年8月時点のものです。画面は変わることがあります。

どこから入るか

トップページ(j-platpat.inpit.go.jp)の上部メニューから「特許・実用新案」→「特許・実用新案検索」を選びます。

トップにも大きな検索窓(簡易検索)がありますが、今回は使いません。簡易検索は探す欄を選べないので、「出願人の欄にこの社名がある出願だけ」という引き方ができないためです。

出願人の名前で検索する

「特許・実用新案検索」の画面で、次の3つをやります。

  1. 検索項目のプルダウンから「出願人/権利者/著者所属」を選ぶ。願書の出願人欄、つまり権利を持つ側の名前だけを対象にするためです
  2. キーワード欄に社名を入れる。「株式会社」は省いてかまいません。この欄は名前の一部が含まれれば当たる部分一致です
  3. 「検索」ボタンを押す。テキスト検索対象と文献種別は、既定(和文・国内文献)のままでかまいません

これで一覧が出ます。ただし、部分一致には裏があります。「ニコン」と入れると、メニコン(コンタクトレンズの会社)のような、名前に「ニコン」を含むだけの無関係の会社も混ざります。一覧の出願人名の列を、最初のうちは必ず目で確かめてください。

旧社名・表記ゆれ・グループ会社

ここがこの調べものの本丸です。会社の名前は、一つではありません。

  • 旧社名。富士フイルムは2006年まで「富士写真フイルム」でした。特許の書類には出願した当時の名前が残るので、いまの社名だけで引くと古い時代の出願がごっそり落ちます。パナソニックも2008年までは「松下電器産業」でした。社名変更の年を沿革ページで確かめて、新旧両方で引いてください
  • 表記。富士フイルムの「イ」は大きいイで、「富士フィルム」とは別の文字列です。キヤノンの「ヤ」も大きいヤです。正式表記は各社サイトの会社概要で確かめられます
  • グループ会社。出願の名義が親会社ではなく、研究子会社や知財管理会社になっていることがあります。親会社の名前だけで数えると桁が変わる会社もあります

当サイトは特許庁の一括提供データを扱っていますが、そこに出てくる出願人の名前は、異なり表記で94万7,845件あります。同じ会社が別の名前で何度も出てくることは、例外ではなく普通のことです。

足してもよいのですが、もっと確実な方法があります。

識別番号で引く

特許庁は、出願の手続をする者ごとに9桁の「識別番号」を振っています。手続ごとではなく1人(1社)に1つの番号なので、この番号で引けば表記のゆれに振り回されません。

手順は二段です。

  1. まず社名で検索し、確実にその会社のものと分かる出願を1件開きます
  2. その案件の「経過情報」を表示すると、出願人の名前とあわせて9桁の数字を確かめられます。これがその会社の識別番号です

番号が分かったら、検索項目のプルダウンで「申請人識別番号」を選び、9桁を入れて検索し直します。名前の書き方によらず、同じ出願人の案件が引けます。

ただし万能ではありません。古い時代に別の番号が振られていて、1社に番号が複数ある会社もあります。それでも、名前の部分一致で別会社が混ざるよりはるかに確実です。

年と分類で絞り込む

一覧が数千件になったら、条件を足して絞ります。

  • 年で絞る。検索オプションを開き、日付指定で「出願日」を選んで期間を入れます。公開日ではなく出願日を使うのは、研究がされた時期にいちばん近い日付だからです
  • 分野で絞る。検索項目に「IPC」(国際特許分類)を選んで分類記号を入れます。ただし、記号を最初から知っている人はいないので、順序を逆にします。まず社名だけで検索し、結果一覧の「各種ランキング」ボタンを押すと、ヒットした案件に多い分類(FI)と出願人のランキングが出ます。そこに並ぶ記号を控えてから、条件に足して絞り直すのが早道です

なお、検索に使われる分類は公報が発行された当時のものではなく、見直しが反映された最新のものです。古い出願も今の分類体系で引けるということなので、絞り込みには好都合です。

件数を読むときの注意

一つだけ、必ず知っておくべきことがあります。出願は、原則として出願から1年6か月たつまで公開されません。直近1年半の件数は、実際より必ず少なく出ます。

そうです。年ごとの件数を並べて「この会社は最近減っている」と読むのは、この仕組みを知らないと確実に踏む罠です。直近2年ほどの数字は、増えることはあっても確定はしていません。

1件を読むときに見る場所

一覧から気になる案件を開いたら、見るのは3か所で足ります。

  • 発明の名称。何の技術かの見出しです
  • 要約。何を解決しようとした発明かが数行にまとまっています
  • 出願日。いつの研究かを示します

請求の範囲や明細書の本文は、権利の範囲を厳密に決めるための独特な文章です。企業研究の段階では読み飛ばしてかまいません。

なお、検索項目には「発明者/考案者/著者」もあります。特許の書類には会社名と別に発明した個人の名前が載るので、慣れてきたら、気になる分野の技術者を名前から引くこともできます。

画面でできるのは、ここまで

この手順で、「この会社はこの分野に出している」を自分の目で確かめるところまでは行けます。面接の前に主力製品まわりの出願を10件読んでおく、という使い方なら、これで十分です。

その先、たとえば20年分を年ごと・分野ごとに数えて力の入れ先がいつ動いたかを見る作業は、画面では現実的にできません。1社で数万件になると、一覧を繰って確かめるという作りの道具では手に負えなくなるからです。J-PlatPatは1件ずつ読むための道具で、集計のための道具ではありません。

当サイトの記事は、その「画面ではできない側」を特許庁の一括提供データでやったものです。日東電工の22,956件を年と分野で数えた回富士フイルムの11万件で写真からの移り先を追った回ニコンの発明者1,008人の名前を20年分突き合わせた回。どれも、この記事の手順で1件ずつ見る作業の続きにあたります。

どの数字をどう読むと何が分かるか、の側は企業研究のための特許の読み方へ。

出所とデータの作り方

  • J-PlatPat操作マニュアル「キーワードで特許・実用新案を検索する」(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/manual/ja/topics/patent_key.html)|メニューの入り方(グローバルナビゲーション「特許・実用新案」→「特許・実用新案検索」)、「検索」ボタン、検索結果一覧の「各種ランキング」ボタン(FI・FI(メイングループ)・出願人/権利者のランキング表示)、検索オプションの日付指定の操作を確認しました。
  • J-PlatPat操作マニュアル「キーワード入力規則」(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/manual/ja/topics/p0101_searchTips.html)|検索項目の正式表記(「出願人/権利者/著者所属」「申請人識別番号」「発明・考案の名称/タイトル」「要約/抄録」「IPC」「FI」ほか)と、日付指定で「出願日」「公知日/発行日」「公開日」「登録日」などを選べることを確認しました。
  • 特許庁 電子出願ソフトサポートサイト「識別番号について」(https://www.pcinfo.jpo.go.jp/site/4_start/step-0_5_identification-num.html)|識別番号が「手続をする者に対し特許庁長官が付与する9桁のアラビア数字からなる番号」で、手続ごとではなく1人の手続者に1つの番号であること、J-PlatPatで氏名や出願番号から確認できることを確認しました。
  • INPIT「J-PlatPat『特許・実用新案検索』の操作方法に関するFAQ」(https://www.inpit.go.jp/content/100864373.pdf)|検索でヒットする分類は公報発行時点ではなく最新の分類が反映されること、個人名の検索では姓と名の間の空白の有無で2通りのデータがあることを確認しました。
  • 出願公開の時期(出願から原則1年6か月)は特許法第64条によります。
  • 画面名・ボタン名は2026年8月時点でマニュアルに記載の表記です。画面は変わることがあります。
  • 異なり出願人名94万7,845件は、当サイトが特許庁の一括提供データ(特許情報標準データ・整理標準化データ)から数えた値です。

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