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剥がされる途中の透明な光学フィルム

光学

日東電工の偏光板、出願は過去最高

負けたと言われる偏光板で、日東電工の出願が過去最高になった経緯を数えました。

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この記事の要点

  • 液晶用偏光板の日系メーカーのシェアは、2016年の約55%から2023年には10%以下になりました。
  • 日東電工の偏光板の出願は2018年から2022年に1,014件で、自社の過去最高です。
  • 伸びているのは液晶向けより有機EL向けで、3年の平均では2023年に逆転しました。

いま手に持っているスマホにも、偏光板という薄いフィルムが1枚入っています。

図1|偏光板の有無で変わる画面の見え方

図1|偏光板の有無で変わる画面の見え方
左は偏光板を外した状態で、白く光るだけで何も映りません。右はそこに偏光板を1枚入れた、ふつうのスマホの画面です。

図の原寸(SVG)

これが無いと、画面はただ白く光るだけの板になります。文字も絵も出てきません。

この市場から、日本勢はほとんど退きました。液晶用の偏光板では、日系メーカーのシェアは2016年に約55%、2023年には10%以下です。7年で5分の1以下になりました。

ところが同じ時期に、日東電工はこの分野の特許を過去最高まで出しています。

偏光板の出願が増えた会社

特許は、会社の言い分より手堅い記録です。1件ごとに書類を書き、審査に答え、権利を持ち続けるあいだは費用を払います。手を引いた分野の出願は、続きません。

図2|偏光板の特許件数、日東電工と競合2社

図2|偏光板の特許件数、日東電工と競合2社
偏光板の特許を5年ごとに数えて、各社を並べました。色が付いているのが日東電工、灰色が競合です。日東電工は2008–12年の640件を底に増やし、2018–22年は1,014件で、自社の過去最高かつ各社で最多になりました。富士フイルムは1,770件から528件まで減り続けています。どの会社も同じ技術の記号で数えました。会社ごとに事業の呼び方が違うので、そのままでは比べられないためです。

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日東電工の偏光板の特許は、2008年から2012年の640件を底に増えはじめ、直近の5年で1,014件になりました。自社の過去最高です。

同じ図の中で、富士フイルムは1,770件から528件まで減らしています。住友化学も増やしていますが、直近は日東電工が上です。

いったん減ってから過去最高まで戻したのは、この3社では日東電工だけでした。

有機ELへの入れ替わり

図3|偏光フィルムの出願の割合と、その中身

図3|偏光フィルムの出願の割合と、その中身
上段は、偏光フィルムの特許が会社の全出願に占める割合です。2007年の山から2014年に底を打ち、2021年に過去最高へ戻りました。下段は、その中身を液晶向けと有機EL向けに分けたものです。液晶は往時の半分までしか戻らず、伸びたのは有機EL向けで、2023年に逆転しています。

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偏光板の出願は戻りましたが、中身は入れ替わっています。

液晶向けは最盛期の半分ほどまでしか戻らず、伸びたのは有機EL向けでした。有機ELは、液晶に代わる画面の方式です。3年の平均で見ると、2023年に有機ELが液晶を追い越しています。

有機EL向けだけを取り出すと、もっとはっきりします。

図4|有機EL向けの出願、5社それぞれのピークの位置

図4|有機EL向けの出願、5社それぞれのピークの位置
有機EL向けの出願を5年ごとに数え、各社のいちばん多かった区間を100として並べました。規模の差を外して、向きだけを比べる図です。日東電工だけが直近の2018年からの区間で最多になり、ほかの4社はピークが過去にあります。コニカミノルタは1,117件から112件へ、ピークの10%まで落ちました。

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直近の5年がいちばん多い区間になっているのは、日東電工だけです。ほかの4社は途中で山を作り、そこから降りました。

図に並べた5社の中では、累計はいちばん下です。それでも、いま増やしているのはこの会社です。

負けた市場と、勝っている市場

図5|日本勢のシェア、3つの市場の比較

図5|日本勢のシェア、3つの市場の比較
液晶用の偏光板では日系メーカーのシェアが10%以下まで落ちました。一方で、有機EL用の円偏光板は96%、偏光板の材料になる保護フィルムと位相差フィルムは約90%を日本勢が握っています。数字は外部の調査からの引用です。

図の原寸(SVG)

日本勢が退いたのは、完成した偏光板のほうでした。

その材料になるフィルムは、いまも約90%が日本勢です。有機EL用の偏光板も96%。部品で負けて、材料では勝っている状態です。

日東電工も、有価証券報告書に「LCDスマートフォン向け光学フィルムから撤退する」と書いています。やめると書いたのは、いちばん儲かっている事業の一部でした。

稼ぎ頭とテープ事業の出願数

図6|売上の取り分と、出願の取り分

図6|売上の取り分と、出願の取り分
日東電工の3事業を、売上と特許出願のそれぞれで100%に割りました。売上ではオプトロニクスが51%を占めるのに、特許出願では49%のインダストリアルテープが上回ります。売上は2026年3月期、特許は2023年の出願です。利益で割っていないのは、ヒューマンライフが営業赤字で100%の帯に入らないためです。

図の原寸(SVG)

日東電工は売上が約1兆円の素材メーカーで、事業は3つに分かれています。ディスプレイ用フィルムのオプトロニクス。粘着テープのインダストリアルテープ。貼る薬や水処理膜のヒューマンライフです。

売上の半分を占め、営業利益でも他の2事業を大きく引き離しているのがオプトロニクスです。

図7|事業別の営業利益と、同じ事業の出願件数

図7|事業別の営業利益と、同じ事業の出願件数
上段が事業別の営業利益、下段が同じ事業の特許出願件数です。オプトロニクスは利益では大きく離しているのに、出願件数では2010年から2021年まで、一度もインダストリアルテープを逆転していません。

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ところが特許の数では、テープ事業が上回り続けています。2010年から2021年まで、一度も逆転していません。

理由のひとつは、出願という形にしていないことです。特許にすると作り方が公開されるため、製造条件のような技術は出願しない会社も多い、と一般に言われます。

増えた分野と減った分野

図8|2011年からの5年と、2021年からの5年の差

図8|2011年からの5年と、2021年からの5年の差
2011年からの5年と2021年からの5年で、特許の件数を比べました。増えたのは光学素子897→1,162件、表示まわり127→355件、有機EL素子225→347件。減ったのは半導体965→387件、半導体の封止材432→127件、ウエハ加工テープ273→112件です。

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2011年からの5年と2021年からの5年を比べると、増えたのは画面まわり、減ったのは半導体まわりでした。半導体から降りて、画面へ戻ってきた会社です。

偏光板に1,014件を積んだのは2018年から2022年です。この出願が売上や利益に出るとすれば、まだ先です。

同じ時期に偏光板から降りた富士フイルムが、その技術をどこへ移したのかは、別の記事で11万件を数えました。

データ:特許庁「特許情報標準データ」「整理標準化データ」。2026年2月28日時点のものです。

日東電工とグループ会社の出願 22,956件、1985年から2025年までを数えました。日付は出願日です。市場のシェアは外部の調査からの引用で、調査側で企業名が伏せられているため日系メーカーの合計になります。

数え方と限界はデータについてにまとめています。

データについて